北朝鮮とロシアの関係強化にみる西側諸国の対応
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北朝鮮とロシアの関係強化にみる西側諸国の対応

The below commentary was originally written in Japanese. Please click here for the translated English translation of the text.

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北朝鮮とロシアの関係強化にみる西側諸国の対応

 

2024年初頭、ウクライナ戦争で使用する弾道ミサイルを北朝鮮がロシアに提供したとして西側諸国が非難する声を報じるニュースが世界を駆け巡りその後、ロシアと北朝鮮の外相会談がモスクワで行われたとの報道が続いた

 ロシアと北朝鮮の関係強化は昨年後半から加速した。2023年9月、北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が極東ロシアで会談し金総書記はロシアの宇宙基地を訪問しロケットの組み立て工場や発射場を視察するなど両国は軍事的結束を世界にアピールした

その後数か月間に、この露朝軍事協力は現実的なものであることが明らかになった。11月には、北朝鮮がロシアに対し、同年8月以降100万発以上の砲弾を提供したということが報じられた。さらには11月下旬北朝鮮は軍事偵察衛星の打ち上げに成功している。失敗を続けてきた上での今回の打ち上げ成功は、ロシアの技術協力に拠るものであると評されている。

 日本の安全保障関係者は、ロシアと北朝鮮の関係強化に強い懸念を示している。間違いなく、この露朝の結束強化はこの東アジア地域の緊張関係をさらに悪化させるものであり、注視されねばならないものである。もっとも、ここで忘れてはならないのは、このロシアと北朝鮮の関係強化は、ロシアのウクライナ戦争のみを理由としてなされたものではなく、いわゆる「米国陣営」の行動に対するリアクションでもあるという事実である。

 近年、米国陣営は各国間の協力関係を急速に強化してきた。FOIP(「自由で開かれたインド太平洋」構想)に始まり、QUAD日米豪印の協力枠組み)、AUKUS(米英豪の安全保障枠組みと続いてきた近年の米側陣営の連携強化が今回の露朝の動きにつながっている。

露朝首脳会談の一カ月前である昨年八月、日米韓は米キャンプデイビッドにて首脳会談を行い、今後の首脳・閣僚級会談や三か国軍事演習の定例化を決定した。この日米韓三か国協力の制度化について、日本の政府やメディアは「歴史的」「歓迎」一色であり部分的にすらも懸念を示す見解はほとんど見られなかった。しかし、そのリアクションとして、「米側陣営」に対する側(即ちここでは、ロシア、中国、北朝鮮)が連携を強化することは容易に予想可能であった

もちろん、米側陣営の結束強化、軍事力強化の主たる理由は中国の拡張主義的政策であり、また、中国との協力関係にあるとされるロシアと北朝鮮への懸念である。西側諸国にとってこれらの国々への対応は喫緊の課題である。しかし、ここ数年、急速に強化された西側の軍事協力の結果、既に中露合同軍事演習が日本周辺で行われており、また、ロシアから中国も交えた軍事演習の提案が北朝鮮になされている。安全保障のジレンマがすでにこの地域で広がっている

日本でも軍事力強化が進められ、軍事予算倍増や敵基地攻撃能力の保有が決定された。他方、台湾有事の可能性が語られる中で国民の間にはそこに巻き込まれることの懸念が広がっている。外交による緊張緩和を求める声は極めて強い。

世論調査によれば、日本人の8割が台湾有事に巻き込まれることを懸念しており、7割が安全保障を考える上で中国との関係について防衛力強化によるよりも外交や経済での関係深化を望んでいるそして実に、台湾有事が起きた際の自衛隊派兵に反対する声が日本人の約75%に上るのである

 東アジアではまだ軍事衝突には至っておらず、戦争は何としてでも避けられねばならない

ただ軍事力を拡大するだけでは緊張が高まるのみで抑止力は機能しない。抑止力を機能させるには、「武力に訴えなくても核心的利益が脅かされない」と相手に考えさせる余地を残すこと、即ち「安心供与(reassurance)」が不可欠である。そして、安心供与には外交が欠かせない。

 対立が深まり、軍事力増強が両陣営で進めば、ふとしたきっかけにより軍事衝突が起き、強化された軍事力によりその軍事衝突は容易にエスカレートして大戦争となりかねない。また、対立が続けば、地球規模で取り組むべき課題についての対策を取ることもできなくなり、気候変動についてなどもはや手遅れになりかねない。

まさに、「対立の緩和」こそが、日本を含む各国の主要命題でなければならない。

 この間、米国は「民主主義vs権威主義の戦い」として、ウクライナ戦争を支援し、米中対立における米側陣営の強化を図ってきた。しかし、その結果、世界では、中立的立場をはっきりと示す国々が次々と現れ、声をあげる事態になっている。グローバルサウスの国々は、対立の激化により軍事紛争が起き、そこに自らが巻き込まれることは絶対に避けたいと考えている。また、対立や紛争から生じる経済的な悪影響からも逃れたいと心から願っている。この「グローバルサウス」は、人口においても国の数においても世界の過半を占め、急速にこの1,2年で物申す存在になってきた西側が結束すれば、世界秩序の方向性を決することができるという時代は終わりを迎えつつある。

 民主主義や人権、法の支配といった概念が多くの国に根づき、国際的なスタンダードとなることは望ましい。しかし、それは、強制や踏み絵を踏ませることによって実現するものではない。まさに米バイデン大統領が就任直後に繰り返し述べていた通り、「leading by example(模範を示して牽引する)」ことでしか、他国にそれらを広げるすべはない。

 これまでのFOIP、QUAD、日米韓協力といった仕組みは一定の抑止力として機能したかもしれないが、「対立の緩和」とは逆の効果も生み出してきた。日本は、米国との関係は良好に維持しながらも、陣営の強化のみに偏りすぎない努力が必要であり、特に軍事的協力の強化には対立を深めないようにする慎重さが必要である。

そのためには、何よりもチャンネルを拡大し、テーマも質も広げた充実した外交が重要である日本は、中国とは、政府の各レベルにおける制度化された対話ルートの構築が喫緊の課題であるし、どれだけ難しかろうと、露朝とも直接対話の努力を欠かしてはならない。また、中露朝と安全保障以外のテーマでの多国間外交を重視し、対話・協力関係を模索・維持し続けるべきである。

また、グローバルサウス各国と接する際、自陣営の強化を狙っての援助ではなく、各国のニーズ(interest)を聞き、それに基づく援助により各国が発展しその結果、中国を含む他国に振り回されることなく自立した決断ができる国になるような未来を描いての支援が必要である。

このような外交努力を行いつつ、日本は、グローバルサウスやその他多くの国々と共に「米中対立の緩和を米中に対して呼びかけていく必要がある

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